
応用生態工学会新潟大会にて,以下の自由集会を企画・開催しました.1日目の午前(大会プログラム全体の最初のプログラム)に開催されました.
[FA1-01] 河川環境を語ろう!―生態学・水産学・工学の新たな挑戦
*原田 守啓1、森 照貴2、坪井 潤一3、山下 慎吾4、佐々木 愼一5 (1. 東海国立大学機構岐阜大学、2. (国研)土木研究所、3. (国研)水産研究・教育機構 水産技術研究所、4. 環境省生物多様性センター、5. 栃木県立馬頭高校水産科)
以下,facebookに書き込んだ記事をそのまま転載しておきます.
【盛況御礼!応用生態工学会自由集会 河川環境を語ろう!】
※自分の備忘録も兼ねて書いてます.長いです.
応用生態工学会初日,あさイチの自由集会に,沢山の方に参加していただいて,短い時間(2時間)ですが,河川環境目標を巡って「川に何を求めるか?」問題提起がてら意見交換を行いました.
生物多様性・種の多様性の確保(ばかり)に重きをおいているように見える河川環境目標,かたや水産有用魚種の量(ばかり)を追求し,増殖義務を放流によってクリアしようとする内水面漁業,しかし,内水面漁業は,川の恵みと地域とのつなぎ手であり,「川を良くしたい」という思いが共有できれば,河川環境目標に向かって河川管理者と協働できる頼もしい援軍になるのでは?したがって,河川環境目標にも,地域の人たちが川に望む姿,地域ごとの川の恵みを残し,増やす,という観点が必要では?そういった問題意識から自由集会を企画しました.
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自然共生研究センター長の森さんには,河川環境目標についてあらためて考え方を丁寧に説明していただき,河川整備計画のアップデートを通じて計画実装されつつある定量的河川環境目標の最新の状況についても,速報的にご報告いただきました.この数年で,本当に進んだなぁという思いです.
また,内水面漁業関係者が考えるいい川,環境収容力を高めるという観点から,全国の川を巡り日本の内水面漁業の実情に詳しい水研機構の坪井さんから,科学的知見と現場の実際をからめて,環境収容力を高めるための知見を共有していただきました.
まず,環境収容力を高めるとは,素直に川の連続性を確保し,移動可能(遡上可能)な範囲を広げること,というシンプルであるが本質的なメッセージ.環境収容力を高めるための巨石の重要性も強調されました.また,重要な観点として,地域におちる金(経済効果)についても触れていただきました.漁業権対象魚種の中でもいわゆる有用魚種といわれる魚類は,経済的な価値も大きいということ,生物多様性が理想なら「川の恵みの社会的価値」という実利からの側面の重要性に気づきをいただきました.
続いて,現場での実践をテーマとして,環境省の山下さん,栃木県馬頭高校の佐々木さんに話題提供いただきました.
四万十のソウルフィッシュ?であるテナガエビの激減と,資源保護(禁漁),移動性の確保(小さな自然再生による魚道設置),漁協さんのデータ,生態学的モニタリングデータを統合した数年間の取り組みの記録を,美しい画像・映像とともに,ひょうひょうとした語り口でお話いただいた山下さんのお話は,会場に静かな感動と興奮をもたらしました.
落差の激流を逃れて,水際のコケの道を行列を作って夜の堰を上る,紅色に透き通った息をのむほど美しい稚エビたちの命の逞しさとはかなさ.あの小さなエビが数十km上流まで登り,大きく育って,川の恵みとして地域の食卓にのぼる.生態系の恵みの豊かさも含めて,強い印象を受けました.
…よくよく考えると,河川管理者は魚道の設置に許可を出したくらいで,あとは地元が中心になってやっていましたね.
栃木県馬頭高校の佐々木さんは,超絶マニアックな川の同人誌?完成してほやほやの「上中流域の河川環境に重要な瀬と淵と巨石のはなし」を会場参加者に配りつつ,高校生たちの探求活動を通じて,淵の保全,巨石の保全などに実践的に取り組まれてこられた過去数年の取り組みを軸にお話しいただきました.
河道掘削でテレンテレンのまっ平にされてしまった川を見て悲しむ感覚に強く共感しますし,川の地形や河床環境についての卓越した観察眼には舌を巻くばかり.佐々木さんが「薄い本(同人誌)」という「瀬と淵と巨石のはなし」には,石礫床河川の瀬淵と河床環境を改善するためのノウハウが詰まっています.
雑魚の越冬場となる淵の重要性(捕食者がいなくなり,隠れ場所がある大きな淵に集結した雑魚トルネードは圧巻!),農業排水路で育った魚が川に戻れないまま斃死することの弊害など,河川環境研究の盲点となってきたようなところに,直感のまま切り込んでいく佐々木さんは,ナチュラルボーン応用生態工学者だと思います.
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ディスカッションパートでは,4月から長野大学に移られた永山さんに総括コメントを無茶ぶりして,そこから会場を交えたディスカッションを行いました.
ディスカッションを通じた私の大きな気づきは,大河川の河川環境目標は河川管理者(国交省)によるところが大きいが,中小河川になればなるほど,河川管理者以外の関与が重要で,河川法だけでは河川環境目標がクリアできないことを再認識しました.川の応援団をどれだけ増やせるかが中小河川の河川環境を高める鍵だと思いますし,そこに非河川管理者による小さな自然再生や,漁協さんたちによる漁場整備が潜在的なプレイヤーになってくると思います.
また,農業排水路・水田で生まれ育った魚をどれだけ川に回収できるか?,中小河川で越冬させられるか?といった,生き物のロスを減らすことが素直に資源量の増加につながるという佐々木さんの指摘は,まさにその通りで,農業水利と農地生態の方々との連携も重要だと気が付きました.
今回の自由集会の内容と議論は,応用生態工学誌の「トピックス」というジャンルでの投稿が推奨されてますが,メンバーでしっかり議論して,意見論文として投稿したいと思います.
大変実りの多い自由集会でした.ご参加いただいた皆様,ありがとうございました.
追記
佐々木さんと話をしていて,水産有用魚種の多くが回遊魚であることに気がついた.海の栄養も使って育った川の生き物は美味い,という真理がそこに…
追記2
知らないことだらけなのです.水産も,水田農業も,ダム操作(とくに電力ダム)も.自分の専門だけ追いかけて面かぶりクロールしてたらいかんですね.私はよそ見しすぎかもしれませんがまだまだ足りません.




